前回五木寛之氏の近刊書について触れましたが、現在発売中の『文藝春秋』二月特別号にも「新養生訓 病院嫌いの医者いらず」と題して五木氏と慶応大学医学部講師の近藤誠氏の対談が掲載されています。いずれ劣らぬ一家言の持ち主ですから興味深い内容となっており一読をお勧めします。以下その要点をご紹介しましょう。 |
(下線 筆者) |
五木寛之氏 |
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『養生の実技 つよいカラダでなく』(角川書店)という本を書いたが、そのモチ−フは、いまや治療の時代ではない、ということだ。「治療」というのは火事になってから消火器を買いに走るようなものだ。 |
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病気に「完治」はありえない。とりあえず症状が「治まる」というだけだ。 |
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「治療」が二十世紀的なテ−マだとしたら、現在は「養生」という古い言葉がもう一度よみがえってくるのではないか。 |
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病院は病気の巣である。できるだけ近づかないほうがよい。 |
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五十年間、病院には行ってない。保険料だけ払って健康保険証は使ったことがない。 |
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消化器を過保護にしないため週に1度は噛まないで飲み込むようにしている。 |
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友人の婦長の話では、病院から死なずに出ていく人は標準体重より太り気味の人が多いという。標準体重とは美容体重のことである。 |
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「路上生活者に禿頭なし」という真理を発見した。洗髪は1カ月半に1回のみだ。 |
近藤誠氏 |
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一般の人は定期健診を受けるのが健康のためになると思っているが、定期健診が健康に有効だとする根拠はまったくない。それどころか反対の調査結果が出ている。 |
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病院や医療に近づかないほうがいいというのは正しい。 |
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病気があっても気づかないまま終ることは少なくないのだから、病を暴きださないほうがいい。ところが、医療関係者たちは、それでは商売上がったりだ。だから、健康診断だ、人間ドックだといって早期発見を奨励する。検査をして、異常を見つけたらそれに病名をつけ、治療するというシステムがつくり上げられてしまった。 |
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コレステロ−ル値は体重と相関があるが、日本人の調査では高脂血症と診断されるくらいのほうが長命だという結果が出ている。 |
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定期検診を強制的に受けさせるのは個人の尊重を定めた憲法13条に違反している。 |
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納得できる治療が受けられないなら、入院先からの夜逃げを考えるべきだ。 |