■第三章 水素の秘密
英国のF・クリックと米国のJ・ワトソンがDNA(遺伝子)の二重らせん構造を解明したのは一九五三年のことで六二年にはノーベル医学生理学賞に輝いたわけですが、この偉大な研究がなされたのも実はこの研究所においてだったのです。
ところで水素原子は宇宙で最初に誕生した原子番号1の最も基本的な元素で、その原子核は陽子一個のみでその周囲を一個の電子が回っている構造ですが、今から丁度二百四十年前の一七六六年にキャベンディッシュ博士が初めて水素ガスを分離、発見したのです。
さて月刊誌『ニュートン』の最新刊(本年十月号)には次のような記述が見られます。
水素 Hydrogen
水素は生物をつくる遺伝子の本体、DNAに必要不可欠な元素である。
DNAは2本のリボンが、同一軸を中心にらせんを巻いた構造をしている。そのリボンからはアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)の4種類の塩基(窒素を含む環状の有機化合物)が突き出している。この4種類のうち、アデニンとチミン、シトシンとグアニンはそれぞれたがいに結合し、二重らせん構造をつくっている。
この結合部分に関係しているのが、水素原子である。
DNAの二重らせん構造をつくっているこの結合は「水素結合」と呼ばれる。塩基を構成する窒素原子や酸素原子は電子をひきつけようとする力が強い。そのため、一方の塩基にある窒素原子や酸素原子は、他方の塩基の水素原子をひきつけ、その電子を共有しようとする。こうしてできた水素結合だが、その結びつきの力は弱いことが特徴である。そのために容易に切れやすい。水素結合の切れたDNA鎖には、別のタンパク質が結びつき、DNAを複製していく。このように体内で水素結合としての役割もはたす水素は酸素、炭素についで3番目に体内の存在度が大きい元素でもある。(イラスト@参照 傍線筆者)。
さてここで人類の特権である想像の翼を思いきり広げてみることにしましょう。
水素結合の切れたDNA鎖に別のタンパク質が結合しDNAの複製つまり修復が行われると考えると、水素原子が病気の治癒機転に直接関与していることになるのではないか?
だとすると、水素原子こそトーマス博士のいう「たった一つの鍵」ではないか?
|
第四章 活性酸素と活性水素 --->>>
|